初めに
自己破産をしたら生活保護の申請が出来ないのではないか、被保護者(生活保護を受けている方)は自己破産の申立が出来ないのではないかとご心配の方もいらっしゃるかと思います。
この記事では、大阪の司法書士法人「ゆう法務事務所」の司法書士が、自己破産と生活保護の関係について詳しく解説します。
そもそも生活保護とは?
生活保護は、資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対して、国が経済的な援助を行う制度です。
生活保護法で規定されており、この法律の目的は、日本国憲法第二五条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とします(第1条)。
生活保護の種類・範囲
保護の種類及び範囲について、保護の種類は、生活扶助・教育扶助・住宅扶助・医療扶助・介護扶助・出産扶助・生業扶助・葬祭扶助があり、要保護者の必要に応じ、単給又は併給して行われます(第11条)。具体的に見ていきましょう。
生活扶助
食費・衣服費・光熱費等の日常生活に必要な費用で、基準額は、食費等の個人的費用と光熱費等の世帯共通費用を合算して算出し支給します。また、特定の世帯には加算があります。(母子加算等)
住宅扶助
アパート等の家賃で、定められた範囲内で実費を支給します。
教育扶助
義務教育を受けるために必要な学用品費で定められた基準額を支給します。
医療扶助
医療サービスの費用で、費用は直接医療機関へ支払われ、本人負担はありません。
介護扶助
介護サービスの費用で、費用は直接介護事業者に支払われ、本人負担はありません。
出産扶助
出産費用で、定められた範囲内で実費を支給します。
生業扶助
就労に必要な技能の修得等にかかる費用で、定められた範囲内で実費を支給します。
葬祭扶助
葬祭費用で、定められた範囲内で実費を支給します。
生活保護費の使途について
保護費の範囲は、種類ごとに条文で記されておりますので、範囲外の使用は認められないと解されます。
例えば、生活扶助は、衣食その他日常生活の需要を満たすために必用なもの(第12条1項)と記されておりますので、債務の返済に充てることは認められません。
よって、生活保護法の趣旨から被保護者が消費者金融や信販会社等から借入れをすることは禁止されます。
生活保護の申請方法
申請保護の原則により、保護は、要保護者(生活保護を必要とする者)、その扶養義務者(配偶者・親・子供等)又はその他の同居の親族の申請に基づいて開始します(第7条)。また、生活保護の相談・申請窓口は、お住いの地域を所管する福祉事務所の生活保護担当です。
生活保護を受けるための要件
生活保護は世帯単位で行い、世帯全員が、その利用し得る資産、能力その他のあらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提であり、また扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護に優先します。具体的に説明いたします。
資産の活用とは
預貯金、生活に利用されていない土地・家屋等があれば売却し生活費に充ててください。
能力の活用とは
働くことが可能な方は、その能力に応じて働いてください。
あらゆるものの活用とは
年金や手当等の制度で給付を受けることができる場合は、まずそれらを活用してください。
扶養義務者の扶養とは
親族等から援助を受けることができる場合は、まず援助を受けてください。
そのうえで、世帯の収入と厚生労働大臣の定める基準で計算される最低生活費を比較して、収入が最低生活費に満たない場合に保護が適用されます。
生活保護と自己破産の関係
生活保護を受ける人も、自己破産できる
生活保護を受けている方も自己破産の申立てが可能です。法律家が介入すれば、債権者の多くは、被保護者に対し督促をすることはありません。
前述のとおり被保護者は、給付金より借入金の返済をしてはいけませんので、速やかに法律の専門家(弁護士・司法書士等の法律家)に相談しましょう。
自己破産によりすべての財産を失うの?
自己破産により生活家電を含めすべての財産が没収され、居住アパートから退去させられるのではないかと不安に思われているかもしれませんがそうではありません。生活家電の没収や居住アパートから退去させられることはないのです。
また、保有できる財産として、申立様式により異なりますが、管財事件では99万円まで自由財産として保有でき、同時廃止手続きにおいても20万円まで保有できます。
自己破産後の生活保護の申請について
次に、自己破産申立て後の生活保護の申請についてお話いたします。生活保護の申請前に借入金の清算が行われていることは好ましく自己破産による借入金の解決が可能です。
自己破産は、現在の借入金の清算のみならず、自己破産申立て後の生活再建も大切となります。
そのため、自己破産申立て時に生活保護を受けていることや生活保護の申請中であることは、自己破産の申立てに際しマイナス材料とはならず、むしろ現在もしくは将来において安定した生活が確保できると解されます。
最後に
この記事では、自己破産と生活保護の関係について解説致しました。
生活保護を受ける人も、自己破産をすることは可能です。当事務所では、生活保護を受けている方の自己破産の申立て実績も多数ありますので、お気軽にご相談ください。相談は無料となっており、申立費用についても分割払いによるお支払いが可能です。
この記事の著者
司法書士法人ゆう法務事務所の司法書士。大阪司法書士会所属。登録番号「大阪第3737号」、認定番号「第912133号」
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